道玄坂上の、246と交わる少し手前。並木道に面した小さなオステリアがある。こぢんまりとしたテラス席と奥行きのあるバーカウンター、その日のおすすめが並ぶ手書きの黒板メニュー。スタイリッシュなバールでありながら、何かが起こりそうなワクワク感も併せ持つ。「FIGLI di CENTO ANNI」。気兼ねなく「FIGLI(フィリ)」と呼び掛けたくなる、そんな店だ。
ランチの一押しはコレ、定番「イタリアンオムライス」。大胆この上ない、斬新かつ独創的なフォルム。だが驚きはまだほんのとば口にすぎない。オムライスの山を崩し、口に運べばおのずと分かる。 初めての出会い...ちょっと衝撃的でさえある。卵と生クリームのえも言われぬまろやかさとトマトソースの酸味、こんなに合うものなんだ。それに全然重たくない。正直、「えっ、えっ」と驚いているうちに完食してしまった。結構なボリュームがあるのに。
もっとも作る手間暇も惜しまないという。ご飯は、トマト、ハマグリエキス、バターを加え、チキンブイヨンでたく。これに、いためた鶏ひき肉とスペシャルバジルを混ぜて丸くする。トマトソースは煮込むことで甘味を出し、シメジの食感も生かす。クリームソースには、パルメザンチーズをたっぷりかけ、しっかりとした味付けに。仕上げに生バジルとニンニクチップを散らし、アクセントにする。なるほど。
湯島駅6番出入口を出て、昌平橋通りの裏手に回る。歩いて30秒ほどだろうか、隠れ家と呼ぶにふさわしい路地裏のイタリアンにたどり着く。透明なケースの中にカラフルな花を配した、美しい看板が店頭を飾る。店の名は「La Saetta(ラ・サエッタ)」という。白を基調にした店内は、カジュアルで清潔感があり、それでいて温かい。"気持ちのいいわが家"のようだ。そんな空間で食すランチだから、やっぱりとっておきがいい。シェフお任せの日替わり「ランチコース」に決めた。
前菜は「常磐産マコガレイ春の香りをつけたソテーライムソース 春野菜とともに」。マコガレイは、皮はパリッ、身はしっとり。ハーブの香りとフキノトウの苦味がアクセントだ。バリエーション豊かな春野菜もいい。
パスタ「北海道産生雲丹と徳島産フルーツトマトの冷製カッベリーニ バジルとバルサミコのエッセンス」はさわやかな逸品。生雲丹とフルーツトマトがこんなに合うとは。
メイン「桜とほうれん草で包んだ東北和牛イチボのインボルティーニ 自家製桜の花のチーズ添え」。岩塩包みと同じ要領で焼き上げた和牛のイチボの部分は、柔らかさと独特の歯ごたえを併せ持ち、かむほどに味わいが増す。桜の花のチーズとフォンドボーのソースは好みに応じて。それにしてもイタリアワインが進む、憎いメニューである。
乃木坂駅のB4出入口を出て左へ。外苑東通り手前の細い道を、立体交差している赤坂通りを下に見ながら道なりに進むと、程なく正面にこぢんまりとしたダイニングが現れる。「Ristorante da Nino」だ。
オープンは2006年4月。ドアを入ると、すぐ左に魚のショーケースがあり、シェフ自らがその日の朝、築地で仕入れてきた新鮮な魚貝が並ぶ。壁にはシェフが直接買い付けたシチリアの絵皿が飾られている。20席ほどの小さな空間だが、なんとも気持ちがいい。
楽しく美しく、シンプルなのに奥行きがある...それが「Nino」のシチリア料理だ。一押しの「スペシャルランチ」は、その魅力を存分に伝えている。この日のアンティパストは4品。中でも「ブロッコリーとレーズン入り自家製オムレツ」は、ほんのり優しい甘さがクセになる。おまかせパスタは「揚げナスとシチリア産リコッタサラーサのパスタ」。フレッシュトマトソースとリコッタチーズの相性が実にいい。まろやかで、どこか懐かしい。揚げナスの香ばしさがアクセントになって、これは本気で止まらなくなった。
メインは「カジキマグロと車海老のグリル」。まず香りがいい。カジキの焼き目もたまらない。さらにはドルチェ、毎朝焼き上げる自家製パン、カフェ、その隅々に至るまでシェフの心配りがなされていて、自然と笑みがこぼれてしまった。
麻布十番駅4番出口からすぐ。目印はビルに掛かる縦に長いオレンジ色のフラッグ。開業7年目を迎えたイタリアン「パシフィックカレンツ」が今回の舞台である。女性のリピーターが多いのは、スタイリッシュでくつろげる空間とフレンドリーなサービス、そして言うまでもなく洗練された料理があるからだろう。
5種類ある週替わりパスタは季節感を重視。あっさり味を多めにしつつも、必ず1種はこってり系を入れる。この日のとっておきは「穴子とプチトマト、菜の花の白ワイン風味」。彩り鮮やか、見た目からしていい。ローズマリーの香りに誘われて、早速ひと口。実にあっさりとしていて、すっと入ってくる。それにバランスがいい。ほんのり甘みさえ感じるような穴子の優しい味わい、トマトとケッパーの酸味、それらが全体を包み込む程よい塩加減の中でマリアージュする。
食感のバランスも見事だ。絶妙のアルデンテにゆで上げられたロングパスタはもちろんのこと、いずれも個性的な食感を持つ、ブロッコリーニ→菜の花→プチトマト→穴子。その違いを楽しむうちに、気が付けばきれいに平らげていた。
「週替わり One Plate」も女性の心をくすぐる人気メニュー。アンティパスト、メイン、サラダ、パンなど、一皿でいろいろなものを楽しめるから満足度も高い。
今回は、下町のイタリアンといえばここ、という名店の登場である。不忍通り、団子坂下交差点角の「イルサーレ」だ。名店といわれるのには理由がある。料理のおいしさ、感じのいい接客。だが何よりも説得力があるのは、性別を問わず、一人で訪れる常連客が多いこと。一人でも行きたくなる店、という評価は、相当に重いものだと思うのだ。
圧倒的な支持を得ているのは「Aランチ」だそう。4種類のパスタの中から選ぶ。「ブロッコリーとベーコンのトマトソーススパゲッティ」にした。真っ白い器とトマトソースの鮮やかなコントラスト、漂う湯気。さっそく一口。うん、理想的なアルデンテだ。そしてこの味、止まらなくなる。ブロッコリー、玉ネギ、ベーコン、それぞれ異なる食感とそれを包み込むまろやかなトマトソース。癖になる玉ネギの自然な甘さ、具としてトマソーの素材として、玉ネギってこんなにおいしいんだ、と痛感する。
こうなってくると、メイン料理も食べずにはいられない。メイン料理(2種の盛り合わせ)とパスタ両方を楽しみたいなら、Dランチだ。パスタと同じく、真っ白に輝く皿が運ばれてきた。本日のメイン料理は「桜姫鶏モモ肉の炭火焼きと黒ムツのポワレの盛り合わせ」である。桜姫鶏は、皮はパリパリ、身はジューシー、バルサミコソースの酸味と甘さがアクセントだ。黒ムツのポワレも、皮はパリッ、身はしっとり。これにバジルのソースが相まって、実にさっぱりといただける。
DATAイルサーレ
東京都文京区千駄木3-36-11 センチュリー千駄木1F
03-3821-8810