茗荷谷駅の裏手、1階にカレー屋が入っているビルの2階に、「中国料理 木蘭(ムーラン)」はある。シックでモダンな和食店を思わせるような、こぢんまりとした店内は縦に長く、どの席からも奥の厨房が望める。オープンは2003年の暮れ。料理は四川をベースとしつつも、和洋のエッセンスを取り入れたヌーベル・シノワも楽しめる。
さて、主題のランチの話に入ろう。今回はご飯と強烈に合う2品、まずは「坦々麺」である。坦々麺というと、辛さと酸っぱさで押すか、ゴマだれを強調するか、どちらかの味が多い。だが、ここの坦々麺は、しっかりとした辛さと、濃厚でマイルドなゴマの風味が共存している。秘密は自家製のゴマだれとラー油だ。
麺をすすった後は、ご飯と一緒にスープを味わいたい。干しエビを入れることで魚介系のコクもプラスした、一度食べたら忘れられないスープである。
2品目は、四川といえば外せない「麻婆豆腐」だ。「木蘭」の麻婆豆腐の魅力、それはバランスのよさ、辛さ
の中にある甘みである。辛さは、本場四川の熟成された豆板醤で。甘みは、自家製甜麺醤(テンメンジャン)で。そして最後に、四川山椒でしびれのアクセントを出す。決して辛過ぎることはない。それでいて適度な辛さの向こうから、まろやかな甘みが押し寄せてくる。
DATA木蘭
東京都文京区大塚1-1-14 田部井ビル2F
03-5976-3751
山手通りと目黒川が平行に流れる中目黒駅付近。駅から池尻方面へ2分ほど、山手通りと目黒川に挟まれた位置に「Barancetta(バランチェッタ)」はある。オープンは2004年4月。重厚感ある木の柱やカウンター、大小さまざまなサイズの額に飾られた写真やアート、そしてBGMはジャズだ。
今回はAランチを注文した。8種類の中から選ぶ本日の前菜、肉もしくは魚の本日のメイン、デザート盛り合わせ、自家製パン、コーヒーまたは紅茶が付く。この日の魚のメインは「マグロあご肉のコンフィ シェリービネガーソース」。一度低温でゆでてから粉を付けて焼いたマグロあご肉はジューシーで、シェリービネガーの酸味とよく合う。ガルニがまたいい。ビエトラと呼ばれる白菜に似たイタリア野菜、赤と黄のピーマン、生ハムを炒めたものだが、ビエトラと塩の効いた生ハムの相性が秀逸。ビエトラは「バリバリ」、生ハムは「カリカリ」と、食感のハーモニーも見事である。
一方、肉のメインは「仔羊のポルチーニ巻き マスタードソース」。仔羊の肩肉とポルチーニを網脂で包んで焼き上げている。シコシコのポルチーニ、弾力のある仔羊、なんとも食べこたえのある日と一品だ。サルサヴェルデ(みじん切りにしたバジルとエシャロットのあえ物)をのせると、酸っぱさが加わってまた別の味わいになる。
それにしても、デザートに至るまで、実にバランスのいい料理が楽しめた。
赤坂界隈には中華の名店が多い。そういえば大使館も多い。なにか関係がありそうだ。ここ「北京宮廷料理 赤坂 涵梅舫(かんめいほう)」は1998年2月の開店以来、食通をうならせてきた店だ。北京宮廷料理とは、広東料理、四川料理など中国各地の料理の一番いいところを取り入れ、それらを集大成したものだという。
宮廷料理といっても、決して高くない。特にランチのコストパフォーマンスの高さは目を見張るものがある。「宮爆双脆 海老、いか辛し炒め」は、味付け、食感とも心憎いまでに計算し尽くされた一皿。プリプリッとしてそれでいて柔らかいエビとイカ、サクッと軽やかなクワイとカシューナッツ、口の中が自然と楽しくなってくる。キクラゲのように見える黒い食材、実は揚げた唐辛子だ。毎日丁寧に作るベースのスープに、黒酢、砂糖、しょう油、唐辛子を加えることで、ちょっと酸っぱく、ちょっと甘く、ちょっと辛い、絶妙の味付けが完成する。
「回鍋肉 皮付き豚肉とキャベツ辛し炒め」も、味がビシッと決まった中に、じわじわと素材のおいしさが主張してくる逸品。事前に豚肉を2分ほど湯通しし、無駄な脂を取ってから豪快に炒めるという。かむほどに味が出る薄めの豚肉と、シャキシャキのキャベツとピーマン、後からピリッとくる豆板醤。厳選された素材と素材のよさを完璧に引き出す調理法、その両方がなければこの域に達するものではないと思う。
おいしい和食を食べさせてくれる店というのが、東京には少ない気がする。これは、という所を見つけてもしばらくすると店を閉めてしまったり、中途半端に和洋折衷だったり。で、久々にいい店を見つけた。「日本料理 ありそ亭青山」である。
福井県三国温泉の老舗料理旅館「荒磯亭」直営の店だから、供するのは北陸の旬の素材を使った本格的な日本料理だ。けれども、決して高くない。テーブル席のみというモダンな店内で、カジュアルに楽しめるのだ。 その代表的なメニューとして、福井ならではの「おろし蕎麦」を挙げたい。辛味大根の絞り汁をだしに使ったぶっかけスタイルの冷やしそばで、だしによく絡む平打ち麺ののど越しと、ツンとくる刺激がたまらない。
和食といえば、やはり魚は外せない。「彩り膳」は、焼き魚2種、煮魚、お造りと、ベーシックな魚料理のすべてが味わえる人気メニュー。この日の焼き魚は「太刀魚の若狭焼」と「鯵の塩焼き」、煮魚は「メカジキの揚煮」、お造りは「鮪」。
さっぱりとした味付けの太刀魚は、身がしっとりしていて、かつふくよか。穴子に近い食感といえば、感じが伝わるかもしれない。鯵も開きではなく丸なので、身のしなやかさが強調されている。皮に振った塩の加減も絶妙。メカジキは、大根、菜の花の炊き合わせとのバランスがいい。一味の赤が載った白髪ネギがアクセントになって、上品なあんが一層引き立っている。
店の名は「GLOBE DU MONDE(グローブ デュ モンド)」。評判のブラッスリーだ。目印はフランス国旗とログハウス風の外観。もともと大工仕事が好きだったというオーナーシェフが、業者の手を一切借りずに、自分一人で造り上げた店である。
ランチは2種類。今回はBコースを注文した。内容はメイン(肉or魚)、前菜、デザート盛り合わせ(6種)、パン、そしてコーヒーまたは紅茶が付く。まずは魚のメイン「マトウダイのポワレ オリーブとトマトとバジルのソース」から。
豪快さと豊かな彩りを兼ね備えたお皿である。皮はパリッ、身はしなやかなマトウダイ。硬過ぎず軟らか過ぎず、火の入れ方が絶妙の野菜たち。これらをオリーブとトマトの酸味が橋渡しして、口へ運ぶにつれ、もっと食べたいという欲望を駆り立てる。
み合わせの妙、野菜の食感の楽しさと、実に創造的な一皿に仕上がっている。