目印は、赤坂通り沿いに掲げられたフランス国旗。階段を下りて店に入ると、白を基調としたシンプルで気持ちのいい空間が広がる。ここ「オステルリー スズキ」のオープンは1999年9月6日のこと。
この店のルーツは、ブルゴーニュ地方の郷土料理にあるという。だが、「ビストロではなく、あくまでもレストランの味」にこだわる。郷土料理らしい重量感を保ちつつも、生クリームやバターをぎりぎりまで抑え、さっぱりと仕上げる。その温かくも洗練された味を堪能したいなら、店のスペシャリテ「和牛頬肉の赤ワイン煮込み」がおすすめだ。
和牛頬肉をブルゴーニュ産の赤ワインに一日漬け、翌日、火を入れて約8時間、軟らかさを確認しながら煮込んでいく。残った煮汁はさらに一日置き、分離した上澄みの脂分を取り除く。そしてオーダーごとに肉とソースを合わせていく。この一皿が出来上がるまでに、優に3日かかるのである。
ほろほろととろけるような食感。頬肉が持つ濃厚さは十分生かしつつも、意外なくらいさわやかである。隠し味のポートワインが醸し出す甘さのアクセントも素晴らしい。ビッフェスタイルで、好みの3品が自由に選べるデザートも心憎い。今後とも通い続けたい店である。
DATAオステルリースズキ
東京都港区赤坂5-4-17 前田ビルB1F
03-3585-6080
乃木坂駅のB4出入口を出て左へ。外苑東通り手前の細い道を、立体交差している赤坂通りを下に見ながら道なりに進むと、程なく正面にこぢんまりとしたダイニングが現れる。「Ristorante da Nino」だ。
オープンは2006年4月。ドアを入ると、すぐ左に魚のショーケースがあり、シェフ自らがその日の朝、築地で仕入れてきた新鮮な魚貝が並ぶ。壁にはシェフが直接買い付けたシチリアの絵皿が飾られている。20席ほどの小さな空間だが、なんとも気持ちがいい。
楽しく美しく、シンプルなのに奥行きがある...それが「Nino」のシチリア料理だ。一押しの「スペシャルランチ」は、その魅力を存分に伝えている。この日のアンティパストは4品。中でも「ブロッコリーとレーズン入り自家製オムレツ」は、ほんのり優しい甘さがクセになる。おまかせパスタは「揚げナスとシチリア産リコッタサラーサのパスタ」。フレッシュトマトソースとリコッタチーズの相性が実にいい。まろやかで、どこか懐かしい。揚げナスの香ばしさがアクセントになって、これは本気で止まらなくなった。
メインは「カジキマグロと車海老のグリル」。まず香りがいい。カジキの焼き目もたまらない。さらにはドルチェ、毎朝焼き上げる自家製パン、カフェ、その隅々に至るまでシェフの心配りがなされていて、自然と笑みがこぼれてしまった。
正面にドコモタワーを望みながら、明治通りを北へ。外観もスタイリッシュな上海家庭料理店「ROBERT'S」へ向かう。
この店の名物「黒酢酢豚」と「えびの湯葉巻き」を早速いただく。黒酢酢豚のファーストインパクトは独特の甘さ、だが甘さはすぐに引き、香ばしさと、肉そのものの甘さへと変わる。そして実に軽い。
湯葉巻きは絶妙塩味&エビがプリプリ。軽く炒めたネギもよく合う。どちらも一度食べたら忘れられない=癖になる。
かつての上海はこんな感じだったのでは、と思わせるレトロな雰囲気も魅力だ。
DATAROBERT'S
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-21-6 プラザF1
03-5269-0045
京橋駅から鍛冶橋通りを皇居方面へ。柳通りと交差する一つ目の信号を右に曲がるとすぐの場所に、南インド料理の名店「ダバ インディア」はオフィス街の真ん中にある。
南インドの主食はコメだ。だから数種のカレーとライスの組み合わせが満喫できる、南インド式カレー定食ことミールスは外せない。さっそく定番「ランチミールス」をいただくことにした。本日のカレー3種とサンバル、ラッサム、ライス、バトゥーラ(揚げパン)、パパド(豆の粉で作ったせんべい)。ワンプレートなのに豪華であり、鮮やかである。香りもいい(カレーリーフを使っているからだそうだ)。
この日の「本日のカレー」3種は、辛口=マトンとブラックペッパー、中辛=チキンひき肉、マイルド=2種の豆カレー。なんといっても驚くのは、それぞれのカレーがメインとなる食材の味を際立たせていることだ。
さわやかな辛さとブラックペッパーのアクセントがマトンを引き立て、ホウレンソウソースがチキンに奥行きを与える、といったように。さらに特筆すべきは、ご飯がどんどん進むこと。南インドのみそ汁といわれる「サンバル」や、酸味が効いたトマトのスープ「ラッサム」ともどもご飯とよく合う。よって"南インド式カレー定食"とは、実に腑に落ちる表現なのだ。
DATAダバ インディア
東京都中央区八重洲2-7-9 相模ビル1F
03-3272-7160
グラントウキョウ ノースタワーから見て、外堀通りを挟んで斜め向かいのビル。その地下2階に「中国料理 天山」はある。
歴史ある名の知れた店だ。だが構えた様子は全くない。むしろどこか懐かしく、長年東京の玄関・八重洲で営業してきた余裕のようなものさえ感じる。エントランスもホールも実に広々としている。こういうぜいたくな空間の使い方は、近ごろの店ではなかなかできるものではない。
夏+中国料理、と来れば、やはり冷麺は外せない。この店には、とっておきの冷麺がある。「バンバンジー冷麺」がそれだ。鶏は丸ごと1羽をボイルし、さばいてから下味を付けたスープに入れ、冷ます。その他の具は、キュウリ、トマト、クラゲと至ってシンプル。タレは、自家製のすりゴマとラー油、酢、しょうゆに、砂糖が少々。
口に運んでみて、とにかく驚いたのは、むし鶏の軟らかさである。辛くてまろやかなタレと絡み合って、舌の上でとろけていくのだ。そしてキュウリである。この中に入ると、キュウリは天才になる。みずみずしくシャキシャキと。これはもう止まらない。シンプルなのに奥深い。この店の冷麺は、まさに夏のだいご味である。
DATA中国料理 天山
東京都中央区八重洲1-5-3 不二ビルB2F
03-3275-2115