明治通りを北へ。竹下口交差点から延びるどこか懐かしい原宿商店街を抜ければ、目的地はすぐそこだ。トルコ大使館裏手、ライトグリーンのデコラティブな扉が印象的な「ブラッスリー・ラルテミス」である。
今回は、夜のメニューから抜粋したプチコース「ラルテミスコース」をいただく。主菜、前菜(各7~8品)、デザート(3~4品)を1皿ずつ選択、付き出しや小菓子まで用意されたお得なランチである。まずはとっておきの前菜を。「タスマニアサーモンの瞬間燻製と温泉卵」。これを目指して通い詰める常連も少なくないという店の定番だ。厚めにカットされたサーモンの堂々たる姿が真っ白の皿に映える。エシャロットビネガーのドレッシングとサワークリーム、温泉卵とトリュフの取り合わせも新鮮。このお皿の最大のポイントは、塩を極力控え、桜チップでいぶした"強い煙で瞬間的にスモーク"すること。通常のスモークサーモンとは、正反対の調理法なのだ。口に運べば、その違いがたちまち分かる。分厚いサーモンが、口の中で「ふわっ、とろー」っと、優しい酸味とともに消えていく。この感覚、食べてみないと分からないかもしれない。
メインは「エゾ鹿のポワレ ソース ポワブラード」にした。癖がなく、それでいて野趣あふれるエゾ鹿が冬の元気をくれる。デザート「洋ナシとショコラブランのムースリーヌ」は驚きの味。洋酒の香りの中、3段階の軟らかさが交錯する。
代々木八幡商店会...こぢんまりとしているが、空が広くて、実に心地よい商店街だ。代々木公園駅1番口のちょうど真上に当たる。今回目指す店は、その商店街の一角にある。1番口を出て右、1本目を右折してすぐの左手、創作和食ダイニング「HIBARI」という。
店内は、「アメリカから見た日本」をテーマに造られたという。赤いぼんぼりのような柔らかい照明の下、モダンな木のカウンターやテーブルが配され、独特のミクスチャーを織り成す。その全体感がなんとも絶妙で、お客をゆったりと自由な気分にさせてくれる。
そんな「HIBARI」の料理、京風だしをベースにしたおばんざい中心である。早速いただくことにしよう。「お魚ランチ」。メインのおかず、お刺身2点盛り、小鉢1品、ご飯、お吸い物、お新香が付く。この日のメインは、一番人気の「鮭と高野豆腐の揚げ出し」だ。鮭、高野豆腐とも素揚げし、味が染み渡るようにするが、ポイントは高野豆腐を選んだところ。普通の豆腐と違い、しっとりもちっとするのだとか。口に運ぶと、じゅわーっ。上品なだし、ほくほくの鮭、もちもちの高野豆腐。ついついご飯が進む。
続いて「おばん菜ランチ」。おばんざい4品が並ぶが、中でも一押しは「豚角煮 煮玉子添え」。ボイルしてそのまま角煮の煮だれに漬け込んだという煮玉子の出来が素晴らしい。濃すぎず薄すぎず、軟らかく仕上げた角煮もよろしい。これまたご飯が進んでしまう。
DATAHIBARI
渋谷区富ヶ谷1-2-13 高松DCビルB1F-A
03-3467-9155
道玄坂上の、246と交わる少し手前。並木道に面した小さなオステリアがある。こぢんまりとしたテラス席と奥行きのあるバーカウンター、その日のおすすめが並ぶ手書きの黒板メニュー。スタイリッシュなバールでありながら、何かが起こりそうなワクワク感も併せ持つ。「FIGLI di CENTO ANNI」。気兼ねなく「FIGLI(フィリ)」と呼び掛けたくなる、そんな店だ。
ランチの一押しはコレ、定番「イタリアンオムライス」。大胆この上ない、斬新かつ独創的なフォルム。だが驚きはまだほんのとば口にすぎない。オムライスの山を崩し、口に運べばおのずと分かる。 初めての出会い...ちょっと衝撃的でさえある。卵と生クリームのえも言われぬまろやかさとトマトソースの酸味、こんなに合うものなんだ。それに全然重たくない。正直、「えっ、えっ」と驚いているうちに完食してしまった。結構なボリュームがあるのに。
もっとも作る手間暇も惜しまないという。ご飯は、トマト、ハマグリエキス、バターを加え、チキンブイヨンでたく。これに、いためた鶏ひき肉とスペシャルバジルを混ぜて丸くする。トマトソースは煮込むことで甘味を出し、シメジの食感も生かす。クリームソースには、パルメザンチーズをたっぷりかけ、しっかりとした味付けに。仕上げに生バジルとニンニクチップを散らし、アクセントにする。なるほど。
表参道駅A2出口を出て、伊藤病院の手前を右、突き当たりを左、そしてすぐ右。真っすぐに延びる、この静かで落ち着いた通り、ハラニ(原宿二丁目)通りという。無国籍炭焼き料理「Aoyama GRILLER」は、ハラニ通りに面したビルの2階にある。広いカウンターと窓辺のテーブル席。シックでモダンな佇まい。腰を下ろすと、ふっと息をつける...女性一人でも気兼ねなく立ち寄れる空間だ。無国籍といっても、エスニックやフュージョンとは一線を画す。あくまでも各地の生産者の思いが込められた、旬の食材をどう生かし切るかがテーマ。だからこその炭焼きであり、それを箸でいただくところが無国籍でもある。
自慢のランチ、味わうことにしよう。「炭焼きハンバーグ、大エビフライ」。鮮やかな焼き目の付いたハンバーグは、牛6、豚4の合びきでいずれも国産肉を使用。「炭焼きの場合、練り過ぎるとダレるので、荒めに混ぜて合わせる感じ」という。口元に運ぶと、炭の香りがいい。焦げ目の苦味と香ばしさゆえ、ジューシーさが際立ち、かむほどにほのかな肉の甘みさえ感じる。そして大エビフライ。オーストラリア産こだわりブラックタイガーは、身もギュッと詰まっている。かぶりつくと"しあわせ"が広がる、そんな感じだ。
もう一品、紹介したい。「グリエ特製ハヤシライス」だ。ポイントは、砂糖を焦がしてカラメル状にし、赤ワインと合わせたソース。まずは苦味のインパクト、続いてコクと深みが来て、最後にほんのり甘い、美しい大人のハヤシライスである。
須田町といえば、すぐに名店・老舗の名が思い浮かぶ。「かんだ やぶそば」もその一つ。風情に富んだこの老舗の斜向かいに、「吟ばん」はある。階段を下りて引き戸を開けると、そこはごぢんまりとした料亭の趣。靴を脱いで店に上がる、そんなささいな行為が非日常への入り口となる。左右の襖越しに個室を眺めやりながら、奥座敷へ。ああ、実にしっくりくる。障子があり、床の間がある。かつてのさりげない日常は、いまや、とっておきの非日常なのだ。
そろそろランチをいただくことにしよう。最初は「海鮮丼」。なんとも色がいい。見ているだけでそそられてしまう。宮城のメジマグロ、千葉のマダイ、北海道のウニ、高知のシラス、岩手のホタテ、そして江戸前の最高級といわれる松輪のサバ。いずれもその日の朝、築地で仕入れてきた新鮮な魚ばかりである。サバ、メジ、マダイ...それぞれがとても上品だ。口に入れてまずは食感を楽しむ。それから一呼吸置いて「じわっ」と脂の甘みが訪れる。単に脂の乗りがいいのとは違う。この時間差攻撃がたまらなく魅力的なのだ。
ちょっとぜいたくしたいときはコレ、と常連さんの支持を集める「吟定食」も外せない。皿数の多い豪華な定食だが、一番印象に残ったのは、銀ダラの西京焼。とにかくご飯が進むこと、この上ない。案の定、ご飯をお代わりし、かつすべてきれいに平らげた。随所にこだわりが光る、粋な和食の店。そんな表現がぴたりとハマった。
DATA吟ばん
千代田区神田須田町1-17 第2F&FロイヤルビルB1F
03-3252-1030