こだわりのオムライス 銀座で洋食を。そう思った途端、たくさんの店とメニューが、頭の中をとめどなく駆け巡る。せめて選ぶルールを決めなくては処理しきれない。セオリーは"食べたいメニュー"から店をセレクトする方法か。

 この街なら、加えて"老舗"からの選択もある。"店長のキャラ"で選ぶランチもアリだろう。しかし、どの選択もピンとこない。ならば、本日は"愛らしさ"重視で選んでみようと思うのだ。

 求めるのは、見た目にかわいらしくて、食べてホワッとする癒やし系洋食メニュー。そうなれば悩むことはない。ファイナルアンサーはオムライス。望みは半熟卵がドロっとのったタイプではなく、鮮やかな黄色のつるんとした卵に、赤いケチャップが眩しい、クラシカルで端正なオムライスである。そんな愛しさたっぷりの逸品を味わいたくて「ア・ヴォートル・サンテ・エンドー」を訪れた。カジュアルな店内は、壁にはモネの絵、窓には銀座の街。その雰囲気は、おひとりさまにも優しい。

「こだわりのオムライス」ランチ 生パスタやフルーツカレーにも数多くのファンがいるが、本日は迷いなく「こだわりのオムライス」(1,300円)をオーダー。先に出されたプチサラダと、薄くスライスされたカリカリのフランスパンを食べながら、美しく愛らしい主役の登場を待つことにしよう。

 主役はまるで、滑らかな肌に赤いスカーフをまとった美しき主演女優のように現れた。白い皿を背景に、黄と赤の鮮烈な色彩が映え、整った楕円形のボディには気品さえ漂っている。ケチャップをすくい、スプーンを入れて一口。卵のふんわりした食感とともに、チキンライスが力強く存在を伝えてくる。バターたっぷりの卵に一歩も引かない重厚なうま味。

魚沼産コシヒカリと大山鶏を使ったチキンライスが、シェフの完璧な技で生み出された軟らかな卵に包まれ、まろやかに仕上げられている。絶品オムライスのあいだを取り持つ脇役、ケチャップの甘みと酸味が、華麗なる調和をさらなる高みへと導く。

DATA

ア・ヴォートル・サンテ・エンドー
中央区銀座5-9-5
03-3573-8170

uokyu01.jpg おいしいものが食べたい。何が食べたいのか分からないけど、気取らずに、とにかくおいしいものが食べたい。そんなときに選びたくなるのがこの街だ。人形町。飲食店のバリエーションの豊富さ、新旧名店が混ざり合ったこの街はまさにグルメ天国。何を食べるか決めかねた状況にこそ、この街の真価が発揮される。長年、店を構える老舗に若い力で勝負を挑む新しい店が点在。うまいもの選び放題の人形町で最高のランチをいただこうではないか。

 街は和食優勢。ならばこの街で長年商売をしている和食の店が、真にうまいものを出してくれるに違いない、と推理。飛び込んだのは「魚久本店」内の昼膳処「あじみせ」。魚の粕漬で有名な小売店が営業するレストランである。おひとりさまの特権、調理場が見渡せるカウンター席に陣取り、3種の定食から不動の人気を誇る「銀だら京粕漬定食」(1,296円)をセレクト。職人さんの手さばきを眺めながら、登場を待つことにしよう。

uokyu02.jpg お茶を飲んでいると、5分ほどだろうか、予想以上に早く盆が運ばれてきた。メインの銀だらに3つの小鉢、みそ汁、のシンプルかつ揺るぎのない陣形もまた老舗の流儀か。魚の焼き目が放つ香ばしさと、美しい和食器が五感を刺激してくる。まずはみそ汁から。ずいきのシャクシャク感と油揚げの歯ざわりを、広島の府中みその豊かな風味がまとめる。

 ほっと息をついて、銀だらへ箸を入れる。ほろっ。そんな音が本当にするかのように、身をくずして湯気が上がる。うまいと分かっていて口に運んだのに、予想をはるかに上回る。ふわっと鼻を抜ける酒粕の甘い香り。重なりあう漬けの深いうま味。それに応える魚そのものの味と弾力。

 うまさを噛みしめながら感じるのは、和食の素晴らしさと同時に、この味にたどり着いた老舗の実力。聞けば、漬けの調合や時間は、まだ改良を重ねているとのこと。創業100年。誰もがうなる老舗の味は留まることなくさらなる美味を追い求めている。

DATA

魚久本店
中央区日本橋人形町1-1-20
050-5799-0938

ボロニア風ラザニア 昼の後楽園に降り立った。ここは、神保町から連なる学生街の雰囲気と、飯田橋から連なるビジネスタウンとしての機能が合流する街である。主観ではあるが、こんな街にはうまい店が多くあるものだ。昼休みのビジネスマンやOLに、そして学生にもウケがよく、おいしくなければ、この街で生き残るのは難しい。もうひとつの傾向。神保町や御茶ノ水がそうであるように、大通り沿いよりもわずかに入った路地裏でうまい店と出会える確率が高い。

 後楽園駅から、白山通りを南に。宝生能楽堂へと向かう坂道の路地を入ってすぐ、ここに、知る人ぞ知るイタリアン「la cucina VIVACE」がある。20代の頃にイタリアで修業を積んだ後、都内の名店で料理長を務めた、実力派シェフが腕を振るうレストランである。ウッドとグリーンを基調とした店内には、テーブル席とカウンター席があって、明るくカジュアルな雰囲気。かしこまらずに楽しいランチの時間が過ごせそうだ。

la cucina VIVACEの「ボロニア風ラザニア」ランチ カウンターに陣取って、名物「ボロニア風ラザニア」ランチ(1,300円)を注文した。先に出されたサラダを食べて待つこと10分ほど。小麦粉とチーズが焼けた芳ばしい香りをたてて、皿の中央にどっしりと盛り付けられたラザニアが運ばれてきた。大きめにフォークを入れて、まずは層が奏でるハーモニーを味わうためにひと口で。生地のもっちりに、深みのあるボロニエーゼソースと、風味豊かなベシャメルソース、それにパルミジャーノレッジャーノチーズの香りとコクが同時に押し寄せる。混ざっているのではない。それぞれのうま味が計算され、口の中で、舌の上で静かに調和していく感じである。

 
聞けば、ブイヨンやブロードなどの、いわゆる味を付けるための出汁やスープは一切使わずに、丁寧に炒めた野菜と、じっくりと焼き付けた挽肉で作るボロニエーゼソースが味の決め手です、と。時間をかけて素材のうま味を引き出す技と経験。このほっこり味の正体はシェフの料理への愛情にあるのだ。

DATA

la cucina VIVACE
文京区本郷1-4-6 ヴァリエ後楽園1F
03-3868-3741

ステーキ重 変わりゆく街の中にあってもなお歴史を重ね、独自の世界を守り続ける店がある。進化をやめない街、銀座にも、変わらぬ味を守り続ける牛肉の老舗がある。「銀座 吉澤」は1927年(昭和2年)に和牛専門の卸・小売として開業。さまざまな肉料理を提供する食事処は1951年(昭和26年)に、銀座三丁目に開店した肉料理専門店である。

 老舗、と呼ばれるそんな店には、店構え、内装に、どことなく堂々とした特別なオーラが宿っているものである。暖簾をくぐると、そこは玄関先。ここで靴を脱ぎ、預け、和服をまとった仲居さんの案内で、小上がりから階段を降りて大広間の座敷へとうながされる。そこで交わされる何気ない会話。座敷の床の間では、生け花や、陶器の置物が客を迎え、もてなす。こんな流れもまた、老舗ならではの心地良い儀式となって期待を高めてくれる。創業87年、時代とともに銀座の街と、訪れる人々を見てきた揺るぎない自信と、風格が店の随所に感じられる。



銀座 吉澤の「ステーキ重御膳」 本日は人気の「すき焼鍋御膳」をあえて外したオーダーで「ステーキ重御膳」(2,500円/税抜)を注文した。10分ほどで重箱と、脇を固める小鉢たちが運ばれてきた。重箱のフタを開けると、焼き目の付いた厚みのあるステーキが6枚、ご飯と金糸卵の上に敷き詰められてあらわれた。さっそく、つややかに照るステーキを一枚、頬張ってみる。言葉を失うほどに、とにかく軟らかい。霜降りが舌の上でゆっくりと溶け出し、それでいて、噛めば肉のうま味をしっかりと伝えてくる。ほんのりと照り焼き風に味付けられた肉とご飯の相性は抜群で、箸を休めることを忘れてしまいそうだ。

 聞けば、肉は一頭買いで仕入れた銘柄牛の雌のみを使い、店に隣接するこの店の精肉部門の貯蔵庫でじっくりと熟成させて、最もいい状態で料理をするとのこと。高品質の銘柄牛、牛肉専門卸の目利き、そして熟成の知識。うまい肉を知り尽くした老舗の技と真心。ぜひとも一度味わっていただきたい。

DATA

銀座 吉澤
中央区銀座3-9-19
03-3542-2981

焼穴子玉子ふはふは 街の喧騒にも個性はあるもので、人々が行き交うこの街の熱気にはほかと異なる風情がある。テレビ局、広告代理店が集まる高層ビル群の周辺には、クリエイティブな雰囲気がただよっているし、通りから一歩入れば、和服の女性がはんなりと歩いていたりする。赤坂駅前の赤坂通りからわずかに入った小路を訪れた。かつてのアドレスから「中ノ町小路」と呼ばれるわずか20mほどのこの路地には、小さな名店が多数軒を連ねている。本日のお目当て「會水庵」は、この場所で27年、昼も夜も、ご夫婦二人だけで切り盛りする和食店である。

 はらりとゆれる紅色の暖簾をくぐって店内へ。使い込まれた木のカウンターが出迎える。厨房には長年使われてきた調理器具や土鍋が並び、奥の釜戸は出番を待つように赤く熱を発している。流れる空気が、この店の歴史と優しさ、そして真面目さを伝えてくる。都心の真ん中で不意に出会えたほっこりとした時間。なんとも居心地のよい空間である。



會水庵の「焼穴子玉子ふはふは」ランチ メニューはランチ限定の丼が6種類。中でも目を引くのが「焼穴子玉子ふはふは」(1,400円)だ。そのネーミングもさることながら「栄養つけて、頑張って< 」のひと言コメントがまたいい。心は決まった。「ふはふは」を存分に味わうとしよう。

 器の紅色、玉子の黄色、そして穴子の白と焦げ目の墨色のコントラストが彩る丼に、2つの小鉢とみそ汁が脇を固めて現れた。小鉢は味付け控えめで上品だ。続いてふんわり玉子と焼穴子のコラボへと箸を進める。「ふはふは」は玉子の質感か、と納得して食べ進む。薄味であるにも関わらず、焼穴子から臭みは感じない。見た目は楽しく、料理は生真面目。飽きずに最後まで食べられる優しい丼であった。ランチは予約できず行列覚悟だが、夜のコース(5,000円~)は予約可能という。ご夫婦だけで切り盛りしているこの店に「ふはふは」とはまた違う幸福感を求めて、夜も訪ねてみたい。そう思わせる優しさと温もりを味わった。

DATA

會水庵
港区赤坂6-4-15シティマンション赤坂1F
03-3505-2369
※ランチ時は混雑するため電話不可

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